今年の夏の匂い

マンションの一階の端っこの部屋からは、その部屋の住人が毎日のように焚くのか、東南アジアで売っているようなお香の匂いが漂って来る。
よってその前を通る度にその匂いを嗅ぐことになる。
僕は学生の頃、数ヶ月かけて北インド/ネパールを旅した。
その時、よく嗅いだ香りと似ている気がするので、ふとその旅のことを思い出したりする。
自分の場合、記憶は匂いによって蘇ってくることが多い。
季節の変わり目に香る花の匂いは、いつも色んなことを思い出させてくれる。
後に僕がこのマンションを離れて、花の匂いを嗅いで夏のことを思い出す時、15年も前のインドでの日々と、日本の夏の記憶が微妙に繋がって思い出されるんでしょうか。
しかし印象などいい加減なもんで、インドで嗅いだ匂いなんていうのは、牛の糞や人糞の臭いなんかもあったのに、人糞の臭いを嗅いだとしてもインドのことなど思い出さない。
(インドの一都市バラナシでは神様の乗り物である牛が大切(?)にされていて、かなりの数の野良牛がいます。その牛が道ばたに糞をするのです。)
インドの匂いと言えば、やっぱり香辛料とかチャイの香りであり、人がうんこを目の前にした時に思うのは臭い汚いというものだけだ。
僕もインドで「うーん、牛糞この香り。まさしくインドっぽいね!」とは思わず、ただ臭いとそう思った。
うんこはシチュエーションに限定されずに臭い汚いの感覚を変えない。
ものすごく強いイメージだと思うんだ。
僕はそう思っちゃったんだ。